アメリカ

UPC

KBW_2673アメリカでは、すべての州に適用される連邦法と各州毎に適用される州法が併存しており、各州が法律を制定できる分野とできない分野があります。

相続については、各州の州議会に権限が認められ、各州が法律を定めております。ただ、各州がそれぞれ法律を制定すると、アメリカ内での統一性がなくなるところから、The National Conference of Commissioners on Uniform State Laws(統一州法委員全国会議)とAmerican Bar Association(アメリカ法律家協会)いうところから、Uniform Probate Code(UPC)(統一検認法典)というモデル法が示され、ほぼすべての州法は、UPCから何らかの影響を受けていると言われています。

そのうち、アイダホ、アラスカ、アリゾナ、コロラド、サウスカロライナ、サウスダゴタ、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、メイン、モンタナ、ニュージャージー、ニューメキシコ、ネブラスカ、ノースダコタ、フロリダ、ハワイ、ユタの18州は、独自の修正を加えつつUPCのすべてを採用しているといわれておりますが、上記以外のほぼすべての州は、UPCの一部を採用しているといわれております。

プロベート

アメリカにおいては、フランス法系のルイジアナ州等の例外はありますが、香港と同様イギリス法の流れをくみ、相続財産が少額である等の場合以外は、原則的に遺産の処理はプロベートといわれる裁判所の監督下の手続きにより行われます。したがって、相続が発生した場合、日本のように相続人だけで、預金からの引き出し等ができません。

プロベートの具体的内容は各州により異なりますが、一般的には、次のような内容です。

  • 遺言で、遺言執行人(Executor)の指名がある場合 

→ 遺言執行人(Executor)が、遺言に従って処理する。

  • 遺言がない場合、遺言があっても遺言執行人の指名がない場合、指定された者が遺言執行人になれなかったり、なることを拒否した場合 

→ 遺産管理人(Administrator)が裁判所により選任され、相続人や相続分に関する法律に基づいて処理する。

すなわち、アメリカで相続が発生した場合、原則的に、被相続人の遺産(Estate)は、遺言(Will)がある場合には、その遺言に従って、また、遺言が無い場合は、法律により定められた者に承継されます。ただ、アメリカでは、一般的に、遺産の承継には、遺言の有無に拘わらずプロベートという裁判所の手続が必要です。

プロベートでは、遺言により遺言執行人(Executor)が指名されている場合に、遺言執行人が遺言に従って被相続人の遺産を管理します。遺言がない場合には、遺産管理人(Administrator)に被相続人の遺産を管理する権限を付与する旨の遺産管理状(Letters of Administration)という裁判所の命令が発せられます。

以上のようにして選任された遺産執行人又は遺産管理人が被相続人の遺産の処分、分配、名義書換、遺産税の支払等の手続を行います。

相続人と相続分

これまでお話したとおり、遺言があれば、遺言に従って遺産の処理が行われますが、遺言がなかった場合、相続人と相続分はどうなるのでしょうか。ここでは、UPCでは、どのように規定されているのかについてみてみます。

まず、誰が相続人となるかについて特徴的な点は、まず、Ⅰ配偶者、直系卑属及び父母を一つのグループと考え、これらの者の組み合わせによりまず遺産を分配し、このグループに属するものがいないときには、Ⅱ父母の直系卑属が代襲により相続し、これもいないときに、Ⅲ祖父母とその直系卑属が固有または代襲の相続人となるというように、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのグループを段階的に考える点です。

まず、

① 配偶者がいれば、配偶者は常に相続人となります。

② 子は、第一順位の相続人。ただし、被相続人と配偶者との間の子は、配偶者がいる場合は、相 続人となりません。

③ 親は、配偶者の有無にかかわらず、被相続人の直系卑属がいないときに相続人となります。

ここまでがⅠグループとなります。

Ⅰグループに属する者が誰もいないときに、次のとおりⅡグループ(父母の直系卑属)に移ります。

④ 兄弟姉妹は、配偶者、直系卑属及び親のいずれもいないときに相続人となります。甥や姪は、兄弟姉妹を代襲相続します。日本のように甥、姪に限られませんので、甥、姪がおらず、その直系卑属がいれば、それが代襲相続します。

Ⅰグループに属する者もⅡグループに属する者のいないときに、次のとおりⅢグループ(祖父母又はその直系卑属)に移ります。

⑤ 祖父母は、配偶者、直系卑属、親及び親の直系卑属(兄弟姉妹等)のいずれもいないときに相続人となります。

⑥ 祖父母の直系卑属(叔父、叔母、代襲相続人としてのいとこ等)は、配偶者、直系卑属、親、親の直系卑属(兄弟姉妹等)及び祖父母のいずれもいないときに相続人となります。

Ⅰグループ、Ⅱグループ及びⅢグループに属する者がいずれもいないときには、被相続人が相続前に死に別れた配偶者の直系卑属が相続人となります。

少し詳しく述べていきますと、まず、次の場合、配偶者がすべての遺産を相続します。

① 被相続人に、生存する直系卑属も親もいない場合、又は、② 被相続人に、生存する直系卑属がいるが、それがすべて配偶者との間の直系卑属である場合。

①の場合、生存する兄弟姉妹がいても、配偶者がいる以上、兄弟姉妹は相続人になりません。日本では、この場合、配偶者と兄弟姉妹が相続人になるので、この点異なっています。

②は、被相続人にも配偶者にも、2人の間の直系卑属しかいないことを意味しており、どちらかにそれ以外の直系卑属がいる場合はこれに該当しません。

被相続人に、配偶者との間の直系卑属以外の直系卑属がいないが、配偶者に、被相続人以外の者との間の生存直系卑属がいる場合、配偶者は、225,000米ドル(この金額は年毎の生活費により調整されます)+(遺産額-225,000米ドル)/2を相続し、被相続人と配偶者との間の直系卑属は、残額を相続します。

これに対して、被相続人に、配偶者以外の者との間の直系卑属がいる場合、配偶者は、150,000米ドル(この金額は年毎の生活費により調整されます)+(遺産額-150,000米ドル)/2を相続します。配偶者がいない場合は、直系卑属のみが相続人(孫以下は代襲相続人)になります。

被相続人の親は、被相続人の直系卑属がいる場合、相続人になりませんが、直系卑属がいない場合は相続人となります。この場合配偶者が生存していなければ、親がすべてを相続しますが、配偶者が生存しているときは、配偶者が、300,000米ドル(この金額は年毎の生活費により調整されます)+(遺産額-300,000米ドル)×3/4を相続し、親は、残額を相続します(父母両方がいる場合は、それぞれ1/2ずつとなります。)。

兄弟姉妹を含む親の直系卑属(甥や姪以下は代襲相続人となります)は、配偶者も直系卑属も親もいない場合に初めて相続人となります。そして、配偶者、直系卑属、親、親の直系卑属のいずれもいない場合、被相続人の父方と母方の両系の祖父母がいるときは、父方の祖父母が1/2(父方の祖父母両方がいる場合は、それぞれ1/4ずつとなり、いずれか一方のみの場合は、その者が1/2を取得します。いずれもおらず、叔父叔母等の父方の祖父母の直系卑属がいる場合は、それらの者が代襲相続します)。母方の祖父母についても同様です。

また、父方の祖父母もしくその直系卑属又は母方の祖父母もしくはその直系卑属の内、いずれしかいない場合(たとえば、父方の祖父母もしくその直系卑属はいるが、母方の祖父母もしくはその直系卑属が全くいない場合)には、父方の祖父母もしくその直系卑属が、すべての遺産を相続します。上記によっても、相続人が存在しない場合には、被相続人の元妻(これは、離婚した妻ではなく、死に別れた妻のことです。複数いる場合はそのすべてです)の直系卑属が相続人となります。

アメリカでは、被相続人とその直系卑属を除く被相続人の親の直系卑属は、第1順位の傍系親族(兄弟姉妹、甥、姪等)と呼ばれ、被相続人の親と親の直系卑属を除いた被相続人の祖父母の直系卑属(おじ、おば、いとこ等)は、第2順位の傍系親族と呼ばれています。UPCでは、相続人になれるのは第2順位の傍系親族までに限られており、各州でも同様です。日本では、相続人になれるのは第1順位の傍系親族(かつ代襲相続は、兄弟姉妹の子までしかできません)までなのとは異なります。

アメリカでは、日本のような戸籍がなく、被相続人の親族の探索が難しいにもかかわらず、日本よりも相続人の範囲が広いとなると、相続人を確定することはなおさら難しいといえます。たとえば、日本人女性とアメリカ人男性が結婚して、しばらく日本に居住した後にアメリカに移住し、日本に預金等を有していた夫が死亡し、日本の預金等の相続についてアメリカ法が準拠法となるときなどは、相続人の探索に非常に困難が生ずる可能性があります。

なお、アメリカでは、日本の遺留分制度に相当するものはないと言われておりますが、他方、生存配偶者に遺産の一定額を付与する選択的相続分制度、家産手当、家族手当、免除財産制度等、生存配偶者や子を保護する制度があります。また、アメリカでは、夫婦別産制を採用する州(ニューヨーク州等)と共有財産制(カリフォルニア州等)を採用する州があり、相続の際の生存配偶者の保護の内容も異なります。

代襲相続

代襲相続について、UPCは、各世代による頭割りの代襲(per capita at each generation)という方法を採用していますが、アメリカの各州の約3分の1は、イギリス式代襲(per stirpes)、約半数は、現代的代襲(modern per stirpes又はper capita with representation)という方式を採用しており、UPCと同様の方式を採用しているのは、それ以外というということになります。

まず、「イギリス式代襲(per stirpes)」とは、直系卑属の各血統を平等に扱う株分方式で、日本はこの方式です。たとえば、下記の事例を見てみましょう。

(事例1)Xに子がA,B,Cという子がおり、Aには、a1、Bには、b1, b2,  Cには、c1、c2、c3という子がそれぞれいたとします。A,B,Cの内BとCは、Xより先に死亡しており、その状況で、Xが死亡しました。

事例1で、Xが死亡した場合の各人の相続分は、Aが1/3、b1, b2は、それぞれ、1/6(=1/3×1/2)、c1、c2、c3は、それぞれ、1/9(=1/3×1/3)となります。

これに対して、「現代的代襲(modern per stirpes又はper capita with representation)」は、被相続人の最も近い生存世代で各血統を平等に扱うものですが、それ以降の世代では、イギリス式代襲(株分け)によります。すなわち、生存する子がいる場合は、イギリス式代襲と同様の結果となりますが、生存する子がいない場合には、孫の世代で、平等に(頭割りで)分割されます。上記の事例1を例にすると、イギリス式代襲と同様に、Aが1/3、b1, b2は、それぞれ、1/6(=1/3×1/2)、c1、c2、c3は、それぞれ、1/9(=1/3×1/3)となります。それでは、次の(事例2)では、どうなるでしょうか。

(事例2)Xに子がA,B,Cという子がおり、Aには、a1、Bには、b1, b2,  Cには、c1、c2、c3という子がそれぞれいたとします。しかし、A,B,Cの何れも、Xより先に死亡しており、その状況で、Xが死亡しました。

この場合、「イギリス式代襲」によると、a1が1/3、b1, b2は、それぞれ、1/6(=1/3×1/2)、c1、c2、c3は、それぞれ、1/9(=1/3×1/3)となります。しかし、「現代的代襲」は、被相続人の最も近い生存世代で各血統を平等に扱うので、a1、b1, b2、c1、c2、c3は、頭割りで、それぞれ、1/6を相続することになります。それでは、次の(事例3)では、どうなるでしょうか。

(事例3)Xに子がA,B,Cという子がおり、Aにはa1、Bにはb1, b2,  Cにはc1、c2、c3という子が、a1にはaa1という子が、b1にはbb1、bb2という子がそれぞれいたとします。しかし、A,B,C、a1、b1の何れも、Xより先に死亡しており、その状況でXが死亡しました。

この場合、「現代的代襲」では、被相続人の最も近い生存世代で各血統を平等に扱うだけですので、b2、c1、c2及びc3の相続分は1/6となりますが、aa1、bb1とbb2の相続分は、イギリス式代襲(株分け)によることになり、aa1は、1/6(=1/6×1)、、bb1及びbb2は、1/12(=1/6×1/2)となります。したがって、Xの孫の代(a1、b1, b2, c1、c2、c3)では平等に取り扱われますが、ひ孫の代(aa1、bb1、bb2)では、平等に取り扱われません。

さらに、UPCが採用している「各世代による頭割りの代襲(per capita at each generation)」とは、被相続人との関係で同等の親等に有る者が平等の相続分を取得する方法です。上記のように、「現代的代襲」では、平等の取り扱いは被相続人の最も近い生存世代だけですが、「各世代による頭割りの代襲」では、各世代で平等の取り扱いがなされます。したがって、(事例3)の場合、まず、Xの孫の代(a1、b1, b2, c1、c2、c3)で頭割りされ、生存しているb2, c1、c2、c3は、それぞれ1/6となります。そして、残りの2/6は、ひ孫の代(aa1、bb1、bb2)でさらに頭割りされ、aa1、bb1、bb2の何れも1/9(=2/6×1/3)の相続分となります。

以上、UPCでの相続人及び相続分について簡単に述べてきましたが、各州ではどのようになっているのでしょうか。ここでは、代表として、ニューヨーク州を見てみます。

ニューヨーク州

ニューヨーク州においては、遺言、支配権及び信託に関する法律(Estates, Powers&Trusts(EPT))において、相続に関して規定されております。

相続人と相続分

遺言がない場合である無遺言相続の相続人と相続分は次のとおりです。

① 配偶者と直系卑属がいる場合には、配偶者が、5万ドルとそれを控除した残余遺産の2分の1を取得し、直系卑属が残り取得する(直系卑属については、代襲相続がある。)。

② 配偶者はいるが直系卑属がいない場合には、配偶者が全無遺言遺産を取得する。

③ 配偶者がおらず直系卑属がいるときは、直系卑属が全無遺言遺産を取得する。

④ 配偶者、直系卑属もおらず、被相続人の親がいるときは、親が全無遺言遺産を取得する。

⑤ 配偶者、直系卑属、親がいない場合、被相続人の親の直系卑属が居るときは、親の直系卑属が全遺言遺産を取得する(代襲相続あり)。

⑥ 配偶者、直系卑属、親、親の直系卑属がいない場合、被相続人の祖父母がいるときは、父方の祖父母が2分の1を取得する。父方の祖父母がいない時は、その直系卑属がこの2分の1を取得する(代襲相続あり)。残りの2分の1は、母方の祖父母が取得する。母方の祖父母がいない時は、その直系卑属がこの2分の1を取得する(代襲相続あり)。父方又は母方の一方の祖父母がおらず、かつ、その直系卑属もいない場合には、他方の祖父母が全無遺言遺産を取得する。他方の祖父母もいない場合には、その直系卑属が全遺言遺産を取得する(代襲相続あり)。なお、ここでいう祖父母の直系卑属にはその祖父母の孫より遠い卑属を含まない。

⑦ 配偶者、直系卑属、親、親の直系卑属、祖父母、祖父母の子又は孫がおらず、祖父母のひ孫がいる場合、2分の1を父方の祖父母のひ孫が頭割りで、他の2分の1を母方の祖父母のひ孫が頭割りで取得する。父方又は母方の一方の祖父母のひ孫がいない場合、他方の祖父母のひ孫が全無遺言遺産を取得する。

法律の条文に沿うと上記のような説明になりわかりにくいので、少し説明いたしますと、おおよその相続の順番は、被相続人の配偶者と直系卑属(子、孫等)、親、親の直系卑属(兄弟姉妹等)、祖父母、おじとお、いとこ、いとこの子という順番になります。

たとえば、配偶者と子がいる場合には、配偶者が、5万ドルとそれを控除した残余遺産の2分の1を取得し、子が残りを取得します(代襲相続があり、子が生存していなくても、孫が生存していれば、その孫が残りを取得します)。配偶者と子のいずれか一方しか生存していない場合は、生存者がすべての遺産を取得します。配偶者も子もおらず親が生存する場合には、親がすべての遺産を取得し、親もおらず兄弟姉妹が生存する場合は、兄弟姉妹(代襲相続あり)がすべての遺産を取得するという具合です。

さらに、兄弟姉妹もいない場合は、父方の祖父母と母方の祖父母が2分の1ずつ遺産を取得します。しかし、たとえば、父方の祖父母はいないが父方のおじ、おばや従妹が生存する場合は、父方の祖父母分の2分の1は、母方の祖父母が取得するのではなく、父方のおじ、おばやいとこが取得します。しかし、父方の祖父母、おじ、おばやいとこが生存していない場合に、母方の祖父母、おじ、おばやいとこのいずれかが生存している場合には、仮に、父方の祖父母のひ孫(いとこの子)が生存していたとしても、父方の祖父母分の2分の1は、母方の祖父母、おじ、おばやいとこが取得します。

父方及び母方の祖父母、おじ、おば、いとこの何れも生存していないが、父方及び母方の祖父母のひ孫(いとこの子)がいる場合は、父方、母方でそれぞれ2分の1ずつ取得します。たとえば、父方と母方の祖父母のひ孫(いとこの子)がそれぞれ、1人と2人の場合、父方の祖父母のひ孫(いとこの子)は、2分の1、母方の祖父母のひ孫(いとこの子)は、4分の1となります。父方の祖父母のひ孫(いとこの子)しかいない場合には、それがすべての遺産を取得します。

日本との大きな違いといえば、配偶者が子に優先して5万ドルを相続できる点、配偶者が存在している以上、親や兄弟姉妹は相続人にならない点、甥や姪の子も代襲相続が可能な点、おじ、おば、いとこ等も相続人となりうる点等でしょうか。

生存配偶者と子供を保護する制度

アメリカにおいては、日本の遺留分制度に相当する制度はありませんが、生存配偶者や子供の保護を図るための規定があります。

ニューヨーク州では、別産制(夫婦各自名義の財産は各自のものとする制度です)が採用されておりますが、生存配偶者については、選択的相続分というものが認められていて、遺言がある場合にも、生存配偶者は、被相続人の財産について、一定割合の財産を相続する権利があります。すなわち、生存配偶者に、被相続人の遺言に従って遺産を取得するか、又は当該遺言を放棄して被相続人の遺産の持ち分(選択的相続分)を取得するかの選択権を持っています。ニューヨーク州では、被相続人が1992年9月1日以降に死亡した場合(それより前に死亡した場合には別途規定があります。)、生存配偶者の選択的相続分は、①5万ドルか純遺産の元本価額が5万ドルより少ない場合にはその元本額、又は②純遺産の3分の1の内、①か②かいずれか大きい方とされています。

また、生存配偶者又は生存配偶者がいないか相続権を失った場合には21歳未満の子が、財産の種類ごとに一定金額まで(たとえば、台所道具、楽器、宝石、衣服、家具電気製品等について2万ドル等)取得でき、これは、被相続人の債権者の請求から免除されます。

遺言と家族関係の変動

被相続人が遺言を作成した後に婚姻した生存配偶者について、書面による婚姻前契約で、その生存配偶者に財産を与える旨の取り決めがなされていなかった場合、当該生存配偶者は、被相続人が無遺言で死亡した場合に取得するのと同様の無遺言相続分を取得する権利を有します。また、被相続人が遺言を作成した後に生まれた子について、被相続人の遺産の一定割合を取得する権利が認められています。

他方、遺言者が、配偶者に財産を与え又は配偶者を遺言執行者や信託の受託者に指名する遺言を作成した後に、その配偶者との婚姻が離婚等により解消された場合、遺言で明白に異なる定めをしない限り、そのような処分や指名は法律上撤回されたものとされます。